私も生きているのに向いていない と感じたことはあるが、
人間以外の生物でやっていけるかというとどうだろう。
ひきこもりやニートの若者が、ある日突然
異形の生物に変身してしまう、カフカの「変身」を
グレゴール・ザムザではなく家族の目線で描いた
戦慄の恐怖譚(ひきこもりとその家族にとっては)である。
なので、今回もひきこもり当事者の気持ちや
変身後に感じている気持ち、見えている世界が変化するのかはわからない。
しかもこの話、変身後医師の診断を受けると、
7日以内に死亡宣告を出されてしまうのである。
ひきこもりにとって割と最悪の事態だ。
父親はすぐに変身後の息子を処分しようとするが、
母親は嫌悪感を感じながらも世話をし、とある家族会に
参加する。変異者本人ではなく、その家族会が
あるところも、ひきこもりとよく似ている。
わりと酷い変身後の事例が提示されていく中、
最後にほんの少し希望を残して終わる。
これは、ひきこもりの当事者にとってはなかなか
キツい物語だ。
もちろん、フィクションとしても純粋に楽しめ‥
怖がったりいろいろ考えさせられる。
カフカの「変身」を読み返したくなった。
あれも、妹にめちゃめちゃ嫌われるところが
可哀想なんだよな。