ミステリー小説ではないのに、読み終わったあとのモヤモヤと
ザワザワした不安な感じが残る。
きちんとした食事というか食生活にコンプレックスを
持つ男性と、彼を取り巻く2人の女性の職場恋愛物語。
おかずと汁物とご飯の、基本的なきちんとした食事を
1時間かけて作っても食べるのは15分とか、コストパフォーマンス
は悪いものだと思う。
ましてフルタイムで働いていて、コンロが一つしかない
台所で毎回料理なんて、よほど作るのも食べることも
好きな人じゃないと無理だろう。
だからこの男性が、毎食コンビニじゃなくてみそ汁だけでも作ったら
と言う言葉にイラっとするのもすごく共感できる。
私なんてまともに働いていなくても、毎日の夕食を作るのは、
メニューを決めて買い物に行くことだって面倒だ。
そもそも採集狩猟時代から、戦後の家電が各家庭に行きわたる迄、
食事の用意は多大なエネルギーを必要とする大変な仕事だったんだろう。
もともとコストパフォーマンスが悪い行為なのだ。
それはさておき、仕事ができない芦川さんが異常に職場で
優遇されているところとか、残業を免除してもらったお礼に
手づくりのお菓子を振るまう場面とか、「それはいいのか?」と
モヤモヤするというか、実際にはすぐ首を切らるのではないかと思う。
そして最後は転勤の辞令が出され、3人はバラバラになるのかな、
送迎会の場面で終るのだけど、
ハッキリとした結末は提示されないまま。
読み終わると、一見ほのぼのとした雰囲気のタイトルが
不吉な呪いの言葉のように感じられる。
そんなある意味恐ろしい小説だった。